明治・大正・昭和初期の小説を出題せよ

現在の大学入試においては、国語の現代文の出題のほとんどは「評論」であって、「小説」の出題はかなり少なくなっている。センター試験と国公立の2次試験は辛うじて「小説」の出題を続けているが、私大ではほとんどの大学が「評論」中心の出題だ。大学において「論理的な思考力」が大切なことは、当然だ。

だが、それ以上に「人間としての感性」という部分をおろそかにしてはならないと思う。日本の宝である過去の偉大なる作家達が自らの魂を込めて生み出した名文の数々にふれることで、彼らの苦悩、人生における発見、時代を超えた感性、古く美しき日本語の輝きにふれる機会を増やすために入試における「小説」の復権を唱えたい。

入試で小説を問うことにいろいろな問題があることは充分承知だ。ただ、入試での出会いというきっかけでも無い限り、娯楽に溢れた現代において、自分のお小遣いで小説を買って読む高校生がどれくらいいるだろうか? いたとしても流行のベストセラー物に留まってしまう者も多いのではないか。明治や大正に遡って小説を読もうとする者となれば、相当にその数は減るだろう。驚くべき話だが、今では小説を出題する数少ない試験のうちのひとつであるセンター試験において森鴎外の「護持院原の敵討」が出題された時には「古文が出た!」と騒いでいる子もチラホラ目にしたし、「明治っていつですか?江戸時代ですか?」などと尋ねてくる子もいるくらいなのだ。

「美しき日本語」とか「愛国心」などという最近流行りのスローガンについて、僕自身は抵抗を感じる部分もあるのだが、そういった思想が時流に乗っていることも事実だ。偉大なる先人達から比べてみれば昨日今日デビューしたに過ぎない人ような文章ではなく、没後五十年を経た、明治・大正・昭和初期の小説家達の文章を出題することは世論の支持も得られるのではないだろうか。

当blogの主旨はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/phenotex/20060201

日本語教育について述べているblog】