評論の載っていない赤本?

2006年のセンター試験が終わった。国語第1問の評論は別役実氏の文章だった。別役氏は「日本ビジュアル著作権協会」の活動に賛同し、四谷大塚日能研を訴えている。また同団体は大学受験生にはお馴染みの「赤本」(世界思想社教学社)を訴えていることでも知られる。

以上のことから判断すれば、場合によっては、来年度の赤本は、今年度のセンター試験の評論文が削除されたものになる可能性も充分ある。(すでに代々木ゼミナールはweb上の解答速報にセンター試験の国語を掲載していない。)センター試験の国語は時間配分の見極めが大きなポイントとなるテストであり、過去問の学習が不可能となれば、一番の被害を被るのは受験生である。(*実際に2007年度版の赤本からは別役氏の評論が削除されました。

すでに今年度「志望校の過去問やろうと思ったら載ってないんですけど、どうすればいいですか?」と生徒から相談を受けている。もしも日本で最も多くの受験者を持つセンター試験の赤本の第1問がまるまる削除されるという事態になれば、50万人以上の受験者が前年度の問題を解くことができないという事態に陥る。その時は、もう少し世の人々もこの事態の重大性に気づくだろうか。

もう少し現実的な線として、今後は著作権料分を価格に上乗せした形で入試過去問集が発売されるということも生ずるかもしれない。だが、この場合は1冊の単価がその分上昇するわけであり、受験生の家庭に与える経済的負担は増すことになる。(実際に現代文のテキストが以上な高額になっている塾・予備校も出て来ているという。)経済的理由から過去問対策がおろそかになったために不合格となる生徒も現れるかもしれない。そうなれば、刈谷剛彦氏が「大衆教育社会のゆくえ」の中で指摘しているような階層化の問題にますます拍車がかかることも考えられるだろう。

(ちなみに2006年センター試験国語第2問では文中で登場人物の女子高校生が「"二十億光年の孤独"を読んだ?」というセリフを言う。"二十億光年の孤独"は谷川俊太郎氏の詩集名。谷川氏も「日本ビジュアル著作権協会」で中心的に動いている作家の一人だ。これをきっかけに"二十億光年の孤独"を読もうと思った受験生がいるかもしれない一方で、場合によっては小説の設問も赤本に掲載不可になるかも知れない。)


もちろん赤本だけでなく、他の予備校や出版社の方々もいろいろと懸念されているようだ。
http://d.hatena.ne.jp/zkai/20060121

代ゼミのwebにセンター国語が掲載されてないことに疑問を感じていらっしゃる方も。
http://d.hatena.ne.jp/yotomusi/20060121/p6
http://erictokuga.exblog.jp/3421204


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http://d.hatena.ne.jp/phenotex/20060201